2008年6月7日土曜日

いってらっしゃい大元帥

小学3年生の時に、オヤジの仕事仲間のスナバのおにいちゃんが
なにやらクルマのレースだったかな、そのようなものに
連れていってくれまして。
レースそのものは大して覚えてないんだけど、客席が鉄板だった
記憶がありますな。あと音がうるさかった。
その帰りになぜか本屋に連れていってもらって
好きな本を買っていいよ、と言われた時に手に取ったのが
ハヤカワSF文庫キャプテン・フューチャーシリーズの
「脅威!不死密売団!」でして。
いわゆるスペースオペラの古典であります。
NHKでアニメになったこともある。

その一冊を皮切りに、キャプテン・フューチャーの他の巻も
読みふけった。小学校の図書館にもあったので
それも全部借りた。
たわいもない荒唐無稽な宇宙活劇なんだけど、全編を貫く
センスオブワンダーがずばり、ガキ時代のオレの心を捕まえて
そこから他のSFに入っていってオレを形作るパーツの一部を
確実に構成しているのであります。
たぶん同じような道をたどった同世代はいっぱいいるはず。

翻訳していたのは野田昌宏さんという人で
これはもうSFな人なら知らない人はいない存在。
残念ながらお会いすることはなかったんですけども
キャプテン・フューチャー以上にオレに大影響を及ぼした
フランスのマンガ家メビウスをオレに教えてくれた人でもある。
もちろん直接にじゃなく、SFマガジンの野田さんの
連載を通してだ。

その時の記事はフランスのマンガがすごいよ、という内容で
その中でメビウスを紹介していた。
切手くらいのサイズでメビウスの絵が
そこに引用されており、オレはその小さな絵にショックを
受けました。
うお、すげえ、こんな線は今まで見たことない!
15歳で受けたその衝撃は計り知れず、貯金はたいて
そのままそこで紹介していたヘビーメタルという雑誌を
アメリカからバックナンバーを取り寄せ定期購読申し込み
メビウスみたいな絵ばっかり描きまくった。

こんなおっさんになった今でも
キャプテン・フューチャーを最初に読んだ時の興奮と
メビウスの絵を初めて見た時のめまいを鮮烈に
覚えているのです。

そんな2大ショックをオレに与えてくださった
野田昌宏さんが亡くなった。

野田宇宙大元帥、ありがとうございました。
あなた抜きでのオレの人生はかなり
違うモノになっていたことでしょう。
今頃は窮屈なカラダを捨ててキャプテンと共に
ウル・クォルンを追いかけて火星あたりに
飛んでるんじゃないかと思うなァ。

そしてさらなる深い宇宙の果てへ。
いってらっしゃい。