2010年3月16日火曜日

ミスリード天国

産経新聞の見出しがひどい。
「東京都の2次元児童ポルノ規制、ちばてつやらが反対の記者会見」
こないだ書いた東京都の「青少年健全育成条例改正案」について
本質を知らない人がこのニュースだけ読んだら
「ああ、有名な漫画家さんが酷い子供を対象にした
性犯罪をうながすマンガを擁護してるんだな」と
薄く思うでしょうね。
「ちばてつやらが」とかの敬称の略しかたも感覚的に
「わるもの」扱いして、より一層の誤読を誘うしくみでタチが悪い。
他の新聞の記事も似たり寄ったり。

記者会見にでて、ちばさん達の声を聴いていたのなら
どうしてそんな見出しにできるのかが不思議だなー。

昔SF作家のシオドア・スタージョンという人が
「どんなものでも90%はクズである」と喝破したものですが
その論でいけばマンガの90%はクズなんだろう。
オレのマンガもがんがん殺して大いに暴れる猿が主役だったり
ホモで女好きでヤクザが、これまた愉快に暴れるものだったりと
完全にクズですが、いずれにしても人間が持ってる本質には
暴力やら変態やら危険な思想がみっちり詰まってる。
同時に純粋を求める気持ち、大いなる世界に畏怖する心、とかも
合わせ持ってる。
この世から愛は消えないけど戦争も消えない。
犯罪も消えないし、落とし物を届ける人だって消えないと思う。
矛盾を抱えてこその人間であります。
その一面をないものとする考えの人たちがいて、
その人たちはたぶん健全100%の心の持ち主でしょう、
すばらしい。
でもほとんどの人は違う。
少なくともオレは違う。
弱い心をもてあましながら、それでもなんとか
人も殺さず生きてます。
小学生の頃から非常識かつアンモラルなマンガや小説を
山のように読んだけど、逆にそれらに救われて生きてきましたよ。
自分の抱えてる酷い妄想とかで自分をキライになる子供時代を
乗りきれた。乗りきったハズ。えーっと、たぶん。
そーゆー酷いのばっかり読むとイイって話じゃないですよもちろん。

ちばさんの言い分はここで読めますよ。
「と思います」というタイトルのマンガを読んでください。

ずっと後ろを歩く後輩として、都合よく大先輩にのっかって言うと
オレもどんな表現でも描かれていい「と思います」
もちろん表現者はそれがもたらす結果に責任を持つ前提で。

自分の妄想がいけないものだ不健全でビョーキである、と
健全100%の人たちに子供の頃に威圧的に言われてたら、
たぶん萎縮して酷い人生になってた。
そんな「健全な青少年」が住みにくい世界を
彼らは好きみたいだけど。
オレはごめんこうむりたい。